1人の男が今、覚醒する。豆腐屋の息子で、ガソリンスタンドでバイトする高校3年生の藤原拓海。このところ、彼の周囲が妙に騒がしい。秋名山・峠下りのドリフト勝負で、赤城レッドサンズの高橋啓介の駆る黄色のRX-7が、謎のパンダカラートレノ(通称ハチロク)に軽々と抜き去られてしまったというのだ。性能差、実に200馬力以上。抜かれた啓介も秋名の幽霊かと思うほど信じられない速さだった。まもなくして赤城レッドサンズは秋名山に集結し、あの勝負を目撃していた池谷をリーダーとする秋名スピードスターズに交流戦を持ちかけ、何と対戦相手にハチロクを指名してきた。池谷はかつて"秋名最速の走り屋"と謳われていた藤原文太という存在を知り、彼に交流戦の参加を頼み込む。しかし当日、池谷や啓介たちの前に現れたのは……!
新劇場版 頭文字D
Description
「秋名のハチロク」の名は、赤城レッドサンズの高橋啓介を下した謎のダウンヒルスペシャリストとして、瞬く間に走り屋たちに知れ渡り、腕に自信のある走り屋たちが続々と秋名に集う。そしてある夜、秋名の峠を切り裂く高橋涼介のFCと中里毅のGT-Rの2組のヘッドライトが交差する。一方、藤原拓海は池谷や樹から「走り屋」といわれても戸惑うばかりで、まわりの熱狂からひとり浮いていた。そんなとき、妙義ナイトキッズの中里毅の挑戦を樹が調子にのって勝手に引き受けてしまった…。ハチロク VS GT-R。GT-Rの380馬力にチューンしたRB26DETTエンジンは“バケモン”のひと言。ハチロクに勝ち目はないと思われる中、怒涛の全開バトルが幕をあける。その戦いを冷たく見つめる男、妙義ナイトキッズのナンバー2・庄司慎吾も怪しく存在感を光らせる。峠を切り裂く走り屋たちの本能が炸裂する。
拓海は、赤城最速の男・高橋涼介とのバトルを前にして、そう呟く。拓海の脳裏には高橋涼介の姿が広がっていた。自分は走り屋ではないといい、家業の豆腐屋の手伝いで乗っていたハチロクには興味がなく、峠のバトルに熱意を示さなかった青年は自分のなかの変化に気付いていた。一方、高橋涼介はFC3Sの仕上げにかかっていた。彼の最終判断はマシンのスペックを下げること。340馬力から260馬力に下げ、パワーよりもトータルバランスを重視する。「屈辱だ」という涼介の口元からは笑みが消える。秋名の峠を舞台に、ふたりの運命を決定づける伝説のバトルが始まろうとしていた。ひとりが勝ち、ひとりが負ける。どちらが勝つのも負けるのも見たくない。その場の誰もが不思議な気持ちを抱えていた。公道に並んだハチロク、FC3Sの間に涼介の弟、啓介が立つ。運命のカウントダウンが刻まれる。勝負の時は拓海の未来とともに、今、走りだす!!