ジョゼフ・デルテーイの小説版による“ジャンヌ・ダルク裁判”の物語で、間違いなくサイレント映画の一つの到達点だろう。“悪魔の子”とされ拷問を受けるジャンヌが苦しみに一度は屈服し、囚人として髪を刈られるシーンの厳しさ(実際に髪を切られ涙するクローズ・アップ)、そして自分を持ち直し、あえて火刑台に向かい火にかけられ、苦悶に顔を歪める瞬間、見る者をも貫く痛み(これも鮮烈なクローズ・アップで表現される)。

オーストリアにある、山と谷に囲まれた美しい村ザンクト・ラーデグント。フランツとファニは出会ってすぐに結婚。しかしナチスドイツはオーストリアを併合し、1940年、フランツはエンス基地での軍事訓練に召集され、愛する家族と何カ月も離れて暮らすことに。彼は村に戻ると、教会の神父に兵役は断わると語る。フランツが兵役を拒否しようとしていることはたちまち村中に広まり、彼やファニは村民たちになじられる事態に……。