秋の公園で、老人のゲーリーがチェスを指している。 実はゲーリーは1人きりで、チェスボードの両サイドを行き来してチェスを指しているのだ。黒を指すゲーリーと白を指すゲーリーとではペルソナが変わり、まるで別人のよう。 黒のゲーリーは次々に白の駒を取っていき、ついには白はキングを残すのみとなる。窮地に追い込まれた白のゲーリーが心臓を押さえて倒れてしまう。黒が慌てて、気を逸らしたすきに白はボードの向きをくるっと回す。

運命の相手は、ひと目でわかる──それは本当だった。高校生のアデルは、道ですれ違ったブルーの髪の女に、一瞬で心を奪われる。夢に見るほど彼女を追い求めていたその時、偶然バーでの再会を果たす。彼女の名はエマ、画家を志す美学生。アデルはエマのミステリアスな雰囲気と、豊かな知性と感性に魅了される。やがて初めて知った愛の歓びに、身も心も一途にのめり込んで行くアデル。数年後、教師になる夢を叶えたアデルは、画家になったエマのモデルをつとめながら彼女と暮らし、幸せな日々を送っていた。ところが、エマが絵の披露をかねて友人たちを招いたパーティの後、急に彼女の態度が変わってしまう。淋しさに耐えかねたアデルは、愚かな行動に出てしまうのだが──。