アメリカ中北部の田舎町を舞台に、偽装誘拐が引き起こす惨劇とそれに関わる人々の奇妙な姿を描いたユニークな犯罪ドラマ。  ミネソタ州ミネアポリスに住むカー・ディーラーのジェリー・ランディガード(W・H・メイシー)は借金返済のために自分の妻ジーンを誘拐し、会社のオーナーでもある義父から身代金をいただこうと考えた。誘拐を実行するのは、前科者の従業員から紹介された妙な二人組、カール(S・ブシェミ)とグリムスラッド(P・ストーメア)。だがジーンを自宅から誘拐した二人は、隣町ブレイナードまで逃げたところで、停車を命じた警官と目撃者を射殺してしまう。ブレイナードの女性警察署長マージ・ガンダーソン(F・マクドーマンド)は事件を追ってミネアポリスに赴くが、その間にも狂い始めた誘拐計画は次々と犠牲者を産んでいく……。  コーエン兄弟はその特異な作風で知られる、80~90年代アメリカ・インディペンデント映画界の雄だが、この作品はその真価がもっとも発揮された一編と言っていいだろう。実話を基にしているとはいえ、ほとんどは創作だというストーリー自体の面白さももちろんだが、個々のキャラクターのおかしさとさりげなくも効果的な台詞の数々は、ドラマの完成度を極限まで高めている。雪に覆われた白い町で起こる血みどろの物語。まさに“白のフィルム・ノワール”と呼んでもいい。カンヌ映画祭で監督賞に輝いただけでなく、アカデミーでは主演女優賞と脚本賞も獲得した逸品。

賭けビリヤードのプロ、エディは、ミネソタ・ファッツと呼ばれる男に勝負をいどんだ。優勢に進んでいた試合も、エディが油断して酒を飲んだとたん逆転してしまう。その勝負で全ての財産を失ったエディは、次第に生活がすさんでいく。だが、愛する女性に自殺されたとき、彼は再びファッツに挑むのだった……。ひとりのハスラーを主人公に、人生の挫折と苦渋を描く。

ゲーテの戯曲「ファウスト」をシュヴァンクマイエルが自ら翻案し映画化した「アリス」に続く長編2作目。実在したとされる魔術師の伝説が独自の解釈によってつづられ、奇妙な生物たちの姿や独特な食事描写などが実写・粘土細工・ストップモーションアニメーションなどを駆使して描かれていく。

第76回アカデミー賞最優秀外国語映画賞に輝いた、親子の絆と人生の終幕を温かく描き出した珠玉の感動作。愛する家族や友人たちに囲まれて「さようなら」と微笑む父の姿が、いつまでも忘れられない。

自ら逮捕した連続殺人犯の死刑に立ち会った刑事ジョン。しかし、同じ手口の殺人事件がまた起こった時、死刑執行は悪夢のプロローグに過ぎなかったことを知った……。上質なサスペンス・スリラー。

第二次大戦末期。メリン神父は故郷のオランダでナチスの残虐行為を目の当たりにし、神への信仰を見失っていた。放浪の旅に出た彼はアフリカに辿り着き、そこで古美術収集家の男と出会う。そして、彼からの依頼で教会遺跡の発掘するイギリスの考古学調査隊に加わることになったメリンは、若い神父フランシスや医師サラと知り合い、村の少年ジョセフとも心を通わせていく。だが、やがてジョセフの周囲で奇怪な事件が続発し始める。

ジョンは恋人エレインと結婚を間近に控え、幸せの絶頂にいた。だがある日、彼らのもとを訪れた実姉パティにとあるビデオを見せられ、状況は一変する。そのビデオには、昔ジョンが可愛がっていた姪のノリーンに“もしハーバード大学に合格したら学費を払ってあげる”と軽いノリで約束を交わしているシーンが。ノリーンは本当にハーバードに合格し、この約束も真に受けられていた。高い学費を払うハメになった人の良いジョンは、誰からも工面の協力を得られないため、最後に高校時代からの友人で変わり者のダフに助けを求めるのだが…。