「何事もつつみ隠さず、タブーをつくらず、できるだけすべてのことを分かち合う」 それが、母親らしいことを何ひとつしてくれなかったさと子への反発から、いつも笑顔で幸せな家庭であり続けようとする絵里子の決めた京橋家のルールだ。だが、絵里子の意に反して、家族はそれぞれに秘密を持っていた。夫の貴史は麻子とミーナと言うふたりの愛人の間を行き来し、娘のマナは不登校を続け、建築物に興味を持つ引きこもりがちな息子のコウは父の愛人と知らずにミーナを家庭教師に迎えてしまう。そんなある日、絵里子はさと子とミーナの合同誕生パーティを開く。ところが、酔っ払ったミーナのお陰で家族の秘密が次々に露呈、絵里子の築き上げてきた家庭はもろくも崩れ去った。しかし、自身の誕生日。さと子からのバースデイ・コールによってわだかまりの解けた絵里子は再生することが叶い、プレゼントを抱え帰宅して来た家族を温かく迎えるのであった。
1963年。イギリスのケンブリッジ大学院で理論物理学を専攻していたスティーヴン・ホーキングは、21歳の誕生日を迎え、将来有望な若手研究者への道を順調に歩んでいた。ところが、突如としてALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を発症、余命2年と宣告される。絶望的な恐怖を打ち消そうとこれまで通りの生活をし、研究に没頭しようとするが、彼の身体は次第に自由が利かなくなってゆく。