シュタージ(国家保安省)の局員ヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエ)は、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)と恋人で舞台女優のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。ヴィースラーは盗聴器を通して彼らの監視を始めるが、自由な思想を持つ彼らに次第に魅せられ……。

タルコフスキーとコンチャロフスキーという、旧ソ連の枠を脱して活躍することになる二大俊英が協力して脚本を執筆し、中世ロシア史上最高のイコン画家ルブリョフを主人公に、当時の社会と民衆の関わりを巨視的に捉えた歴史大作で、全体で二部構成。冒頭の、巨大な気球での飛行を試みる男たちの描写が象徴する閉鎖的な時代に、信仰と芸術の力によって風穴を開けたのがルブリョフと言える。彼は同窓の僧侶キリールに陥れられかけ、逆に大公の覚えめでたく宮廷画家となるが、連日、寺院の白い壁に向かい一筆も動かさない。神の愛を描きたいと願う彼の眼に時代は暗く映りすぎた。そして、公弟にそそのかされたタタール人が城を襲う(ここからが第二部)。ルブリョフは白痴の少女を救おうとして敵兵を討ち、後悔から筆を絶ち、修道院に戻るが、誰とも口をきかない。今や落魄の身のキリールとの再会……。ロシアはなお暗黒の中にあったが、大公は巨大な鐘の鋳造で威信回復を図る。今はなき名人の息子ボリースカの指導によって作業は開始され、ルブリョフはそれを興味深く見守る。秘訣を父に教わったという少年だが、実は鐘を作りたいばかりについた出まかせで、ようやく大鐘完成の暁に彼は真実を泣きながらルブリョフに明かす。彼は少年を賞賛し、自らも励まして言った。“君と一緒にやって行こう”……。15年にわたる無言の行の末、最初に出た言葉がそれであった。彼は再び絵筆をとり、その後、それまでの白黒とうって変わった鮮やかなカラーで写し出される偉大な作品群を残したのである。観ることが主人公の忍従に重なるような重厚な作品だが、それ故にラストの解放感は筆舌に尽くし難い。丸裸の自己と神--という一対一の構図を発見するまでの確執を描くのは、後のタルコフスキー作品にも通じるテーマだ。

ロッキー山脈の麓に孤立する村ドッグヴィル。ある日この村の近く、ジョージタウンの方向から銃声が響いた。その直後、村人の青年トムは助けを請う美しい女性グレースと出会う。間もなく追っ手のギャングたちが現われるも、すでに彼女を隠し、その場を切り抜けるトム。彼は翌日、村人たちにグレースをかくまうことを提案した。そして、“2週間で彼女が村人全員に気に入られること”を条件に提案が受け入れられる。そうしてグレースは、トムの計画に従って肉体労働を始めることになるのだが…。

レイモンド・チャンドラー原作『大いなる眠り』をハワード・ホークスが映画化したフィルム・ノワールの古典的名作。探偵フィリップ・マーロウを演じるのはハンフリー・ボガート。

デヴィッド・リンチ監督による衝撃的なサイコ・スリラー。妻レネエと平凡な生活を送る、サックス奏者のフレッド。ところがある日、ディック・ロランドは死んだ、と誰かがインターフォンで謎のメッセージを告げた。やがて一本のビデオ・テープが届く。そこには、妻をバラバラに切り刻む彼の姿が写っていた……。

D.ホフマンとR.デニーロという2人の個性派俳優が挑んだ政治風刺喜劇。執務室で少女にイタズラをした過去が暴かれ次の選挙での再任が危うくなった大統領がとった手段とは……。

出版社勤務の32歳、ブリジット・ジョーンズは禁煙とダイエットを決意する。そんな矢先、気になる上司ダニエルからEメールが届き……。ヘレン・フィールディングの大ベストセラーを映画化したラヴ・コメディ。

1929年、ロンドン。多忙なロンドン警視庁の刑事フランク・ウェバーは、恋人のアリス・ホワイトよりも自分の仕事に関心があるようだ。無視されていると感じていたアリスは、エレガントで行儀のいい芸術家と出かけることに同意する。

フロリダ。高校の人気教師サムが、教え子のケリーからレイプされたと訴えられ、裁判が開かれることに。だがケリーのクラスメイトのスージーの証言によって事件はケリーの狂言だと暴露され、サムが多額の慰謝料を手にして裁判は終結する。それに不審を抱いた刑事デュケは再捜査に乗り出すが、実はサムはケリーやスージーと裏で手を組んでいたのだった。しかも事態は、その後も意外な方向に突き進んでいく。

閉じ込め症候群の患者を担当することになった看護師は、重症を負った患者の秘密を解き明かそうとする過程で、その背景にある過酷な競争関係、不貞、裏切り、そして殺人の真実を知ることになる。