ボルネオで海と共に暮らすバジャウ族の物語。海の精霊を崇め潜水漁法で生計を立てる男と甥の、洋上での仕事ぶりや陸地での語らいを追う。漁師のアレクサンは甥のサリを相棒に、小さな船に積んだコンプレッサーから送られる空気を頼りに海中に潜り魚を獲る。アクシデントが続いても落胆することなく、精霊に祈りを捧げては、海中深く潜ってゆく。自宅近くは開発されたリゾート地があり、漁師よりも安全で稼ぎの安定した仕事が用意されている。父親の勧めにより、リゾートで働き始めたサリの目に映ったのは、ここを訪れる外国人たちの豊かなバカンスだった。土着の島民の宿命と白人社会との格差を克明に描いた民俗ドキュメンタリーだ。