日系の英国作家K・イシグロのブッカー賞受賞作を基に、侯爵に忠実な執事として徹底的にストイックに生きた一人の男の悲哀を描いた物語。恋を知らぬ彼は安っぽい恋愛小説に慰めを得、それを女中頭に見つかり頬を赤らめる。互いに愛情を感じながらもその感情を抑えこんでしまう彼に、彼女は待ちきれず、彼の友人と結婚し町を去る。戦後、侯爵がこの世を去り、ようやく自由を感じた彼は女中頭を訪ねるのだが……。
ニューヨークのデパートで、サンタクロースとして雇われた白ヒゲの老人クリス・クリングル。クリングルのサンタは評判を呼ぶが、彼は「自分は本物のサンタだ」と主張し、ついには裁判が開かれる――
『ブレイド2』や超大作『ヘルボーイ』の成功でハリウッドでも注目を集めるメキシコの異才、ギレルモ・デル・トロ監督がスペインに招かれて撮ったホラー映画。激情型の男を演じたスペインのビッグスター、『オープン・ユア・アイズ』のエドゥアルド・ノリエガや、新星フェルナンド・ティエルブの熱演も見ものだ。ヨーロッパの血塗られた歴史と風土に培われた、怨念のすさまじさが霊を生息させ、さらに恐怖の結末を招く。
逆境の中にあってもたくましく生きていく女性の姿を、「イゴールの約束」のダルデンヌ兄弟が描いた作品。キャンプ場のトレーラーハウスで酒浸りの母と暮らす少女ロゼッタ。ある日、彼女は理由もなく職場をクビになってしまう。ロゼッタは厳しい社会の現実にぶつかりながらも必死で新しい仕事を探しつづけるのだが……。99年のカンヌ映画祭でパルムドールと主演女優賞を受賞。
35年のテキサス。酔っ払いの黒人によって誤って撃ち殺された保安官の妻、エドナ。それまで家計は夫に任せ切りで家に借金がある事すら知らなかった彼女は、銀行から期限までにお金を返さなければ家を売るように言われ、二人の子供を抱えて途方にくれてしまう。そんなある日、物乞いに現れた黒人に家の前の畑で綿花を育てればいい金になる事を教えられ、彼を雇って畑仕事を開始する。途中、幾多の苦難を乗り越え収穫の日を迎えるのだったが……。
夫の一浩とともに銭湯を営んでいた双葉は、夫の失踪とともにそれを休み、パン屋店員のバイトで娘の安澄を支えていた。ある日職場で倒れた彼女が病院で検査を受けると、伝えられたのは末期ガンとの診断であった。2~3カ月の余命しか自分に残されてはいないと知り落ち込む双葉だったが、すぐに残されたやるべき仕事の多さを悟り立ち上がる。
シングルマザーの母宛の手紙を盗み見てしまった女子高生が、手紙の差出人と母を会わせるために、小樽へと旅立つが……。キム・ヒエ、中村優子、キム・ソへら日韓の女優たちが共演した、珠玉のラブ・ストーリー。
第二次世界大戦中、ソ連の秘密警察によってポーランド軍将校が虐殺された「カティンの森事件」を、ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督が映画化した問題作。長い間明らかにされてこなかった同事件の真相を、ソ連の捕虜となった将校たちと、彼らの帰還を待ちわびる家族たちの姿を通して描く。父親を事件で殺された過去を持つワイダ監督が歴史の闇に迫った本作は、第80回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートをはじめ、世界各地の映画祭で高く評価された。