医学の研究に生涯を捧げ、その長年の功績を認められ名誉学位を受けることになった老教授イサク。その授与式は栄光に満ちた日になるはずだったが、前夜に自身の死を暗示する悪夢を見たためか、彼の心は晴れない。イサクは授与式当日に当初の予定を変更して、現在の住まいであるストックホルムから式の行われるルンドまで車で向かおうとする。そんな彼に、義理の娘であるマリアンヌも同行を願い出る。 半日程度の小旅行はイサクにとって、これまでの自分の人生を顧みるまたとない機会となった。青年時代に婚約者を弟に奪われたこと、妻がイサクの無関心に耐えられず不貞を働いたことなどを思い出し煩悶するイサク。そしてマリアンヌに、イサクの息子エヴァルドと彼女の間に子供が居ないのは、イサクを見て育ったエヴァルドが家庭というものに絶望しているからだと告げられる。研究者としての輝かしい名声とは裏腹に、イサクの人生は空虚なものだった。 また、イサクはルンドへ向かう途中様々な人物に出会う。奔放なヒッチハイカーの少女とその二人のボーイフレンド、不毛な夫婦喧嘩を繰り返す男女、引越していったイサクを今でも慕うガソリンスタンドの店主とその妻、そしてイサクの老いた母親。彼らとの出会いと過去への後悔が、徐々にイサクを変えていく。 無事に授与式を終えたイサクはその夜、エヴァルドと家族のことについて誠実に話し合う。寝室の外では昼間に出会ったヒッチハイカーたちが、イサクの栄誉を心から祝福していた。満ち足りた気持ちで眠りにつくイサク。彼が見る夢は前夜の悪夢と違い、不思議な充足感を伴うものだった。
アイオワ州マディソン群の片田舎。農場主の妻フランチェスカは、夫と二人の子供に囲まれ平凡な主婦として穏やかな毎日を送っていた。そんなある日、一人で家の留守をしていた彼女の所へある男が道を尋ねてくる。男の名はロバート・キンケイド。旅のカメラマンで、この近くの屋根のある橋ローズマン・ブリッジを撮影に来たが道に迷ったという。橋までの道案内に車に同乗したフランチェスカ。それは二人にとって、永遠に心に残る4日間の始まりであった……。
中年男アイザックはTVライターとしては売れっ子だったが、シリアスな小説に転向しようと産みの苦しみの最中。彼は粋なレストランで友達とダベっている。共にテーブルを囲むのは大学教授のエールと妻のエミリー。そして現在、彼が同棲中の17歳の高校生トレーシー。どちらかと言えば彼女の方が夢中で、これ以上深みにハマるのを彼は恐れている。そしてある日、彼はMOMAを見物中のエールが連れていた浮気相手のメリーに恋をする…。
若い外科医の妻セブリーヌは、外見は貞淑な女性だったが、内面には激しい情欲が渦巻いていた。淫らな妄想に駆られたあげく、彼女は、昼間だけの娼婦として欲望に身をまかせるようになる……。
19世紀の半ば、スコットランドからニュージーランドへ写真結婚で嫁ぐエイダ。旅のお供は娘のフロラと一台のピアノ。エイダは6歳の時から口がきけず、ピアノが彼女の言葉だった。夫のスチュアートはそのピアノを重すぎると浜辺に置き去りにし、原住民に同化している男ベインズの土地と交換してしまう。ベインズはエイダに“ピアノ・レッスン”をしてくれればピアノを返すというが……。
ポーランドのダンチッヒを舞台に、3歳で自らの成長を止めた少年オスカルの視点で、1927年から1945年の激動の時代を描いた異色の大力作。ブリキの太鼓を叩き、奇声を発しガラスを割るという不思議な力も身につけたオスカル、従兄との不倫を続ける母、臆病者の父、画面は時代が産んだ奇異なキャラクターとグロテスクな描写に溢れ、その毒気たるや凄まじいばかりのものである。
D・クローンネンバーグがセックスをテーマに取り上げ、カンヌ映画祭でその評価が賛否真っ二つに別れた問題作。CFプロデューサーのジェームス・バラードと妻のキャサリンはある日、出張で空港へ向かう途中ハイウェイ上で正面衝突事故を起こす。相手のドライバーは死亡。助手席に乗っていた女性ヘレンはジェームスと共に病院に担ぎ込まれる。やがて回復した2人だったが、彼らは事故の衝撃を通して思わぬ性的興奮を感じていた。そんな中、事故の体験により新しいエクスタシーを開拓した人々がいる事を知った彼らは、次第にその世界にのめり込んでゆく……。