限定された空間で起きる事件を巧みに連関させると言ったいわゆる“グランド・ホテル形式”の原点。過去の想い出を引きずるバレリーナ、彼女の真珠の首飾りを狙う、カイゲルン男爵を自称する泥棒。事業が危機にある入り婿社長のプライジング、彼の速記者フレム、余命あと僅かなクリングラインの五人による、一日半の人間模様を描く。当時のMGMスターを豪華に配役。悠然と構えながらも、グールディングの演出は映画的処理の手際が鮮やかで大変魅きつけられる。

「ガール・オン・ザ・トレイン」「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」のヘイリー・ベネットが異物を飲み込むことで自分を取り戻していく主婦を演じるスリラー。ニューヨーク郊外の邸宅で、誰もがうらやむような暮らしを手に入れたハンター。しかし、まともに話を聞いてくれない夫や、彼女を蔑ろにする義父母の存在など、彼女を取り巻く日常は孤独で息苦しいものだった。そんな中、ハンターの妊娠が発覚し、夫と義父母は待望の第一子に歓喜の声をあげるが、ハンターの孤独はこれまで以上に深くなっていった。ある日、ふとしたことからガラス玉を飲み込みたいという衝動にかられたハンターは、ガラス玉を口に入れて飲み込んでしまう。そこでハンターが痛みとともに感じたのは、得も言われぬ充足感と快楽だった。異物を飲み込むことに多幸感を抱くようになったハンターは、さらなる危険なものを飲み込みたい欲望にかられていく。