映像製作会社社長・立花源也は、かつて一世を風靡した大女優・藤原千代子の半生を振り返るドキュメンタリー制作を依頼された。千代子の大ファンだった立花は若いカメラマンを引き連れ、30年前に人気絶頂の中、忽然と姿を消し、以来公の場に現われなかった千代子の屋敷へ向かった。ようやく姿を現した千代子は、歳は老いても昔の清純な印象を残していた。そして、戸惑いながらも自らの人生を語り始めた。それは、女優になる前、女学生の頃に恋した名も知らぬ男性を、生涯をかけて追い求める壮大なラブ・ストーリーだった。

大石久子は昭和3年、新任教師として瀬戸内海にある小豆島の分校に赴任した。久子が受け持つことになった一年生は十二人で、みな澄んだ瞳をしていた。やがて久子は本校へ転任することになった。しかし貧しい村の教え子たちは、一人として望み通り進学することができなかった。戦争をはさんで島の分校に戻った久子は、そこでかつての教え子たちと再会する。