平安時代、羅生門の下で雨宿りをする下男(上田吉二郎)相手に、旅法師(千秋実)と杣売り(志村喬)が奇妙な話を語り始める。京の都で悪名高き盗賊多襄丸(三船敏郎)が山中で侍夫婦の妻(京マチ子)を襲い、夫(森雅之)を殺害したという。だが、検非違使による調査が始まると、盗賊と妻の証言はまったく異なっており……。
タルコフスキーとコンチャロフスキーという、旧ソ連の枠を脱して活躍することになる二大俊英が協力して脚本を執筆し、中世ロシア史上最高のイコン画家ルブリョフを主人公に、当時の社会と民衆の関わりを巨視的に捉えた歴史大作で、全体で二部構成。冒頭の、巨大な気球での飛行を試みる男たちの描写が象徴する閉鎖的な時代に、信仰と芸術の力によって風穴を開けたのがルブリョフと言える。彼は同窓の僧侶キリールに陥れられかけ、逆に大公の覚えめでたく宮廷画家となるが、連日、寺院の白い壁に向かい一筆も動かさない。神の愛を描きたいと願う彼の眼に時代は暗く映りすぎた。そして、公弟にそそのかされたタタール人が城を襲う(ここからが第二部)。ルブリョフは白痴の少女を救おうとして敵兵を討ち、後悔から筆を絶ち、修道院に戻るが、誰とも口をきかない。今や落魄の身のキリールとの再会……。ロシアはなお暗黒の中にあったが、大公は巨大な鐘の鋳造で威信回復を図る。今はなき名人の息子ボリースカの指導によって作業は開始され、ルブリョフはそれを興味深く見守る。秘訣を父に教わったという少年だが、実は鐘を作りたいばかりについた出まかせで、ようやく大鐘完成の暁に彼は真実を泣きながらルブリョフに明かす。彼は少年を賞賛し、自らも励まして言った。“君と一緒にやって行こう”……。15年にわたる無言の行の末、最初に出た言葉がそれであった。彼は再び絵筆をとり、その後、それまでの白黒とうって変わった鮮やかなカラーで写し出される偉大な作品群を残したのである。観ることが主人公の忍従に重なるような重厚な作品だが、それ故にラストの解放感は筆舌に尽くし難い。丸裸の自己と神--という一対一の構図を発見するまでの確執を描くのは、後のタルコフスキー作品にも通じるテーマだ。
1937年のロスアンゼルス。私立探偵ジェイクはモーレイ夫人からダム建設技師である夫の浮気調査を依頼される。だが、盗み取りした写真がなぜか新聞に掲載され、それを見たもうひとりのモーレイ夫人が現れる。実は彼女こそ本物で、名をイヴリンという。ジェイクはこれがダム建設をめぐる疑惑と関係ありと睨んで調査を開始するが、モーレイは溺死体で発見され、ジェイクもまた謎の男たちに暴行を受ける。探偵と依頼人という関係を越えはじめたイヴリンとジェイクだったが、なおも謎は深まるばかりだった……。
ロッキー山脈の麓に孤立する村ドッグヴィル。ある日この村の近く、ジョージタウンの方向から銃声が響いた。その直後、村人の青年トムは助けを請う美しい女性グレースと出会う。間もなく追っ手のギャングたちが現われるも、すでに彼女を隠し、その場を切り抜けるトム。彼は翌日、村人たちにグレースをかくまうことを提案した。そして、“2週間で彼女が村人全員に気に入られること”を条件に提案が受け入れられる。そうしてグレースは、トムの計画に従って肉体労働を始めることになるのだが…。
1909年、人種差別が色濃く残るジョージア州。幼くして出産経験がある少女セリーにとって心の支えは、美人で頭がいい妹ネティだった。そんなセリーは“ミスター”と呼ばれる男性に嫁ぐことに。奴隷も同然の毎日を過ごす中、家出をしたネティがセリーの家に訪ねてくるが、ミスターは彼女を追い払ってしまう。やがてミスターは昔の恋人で歌手のシャグを家に住まわせるように。セリーはシャグとの出会いを機に自立を意識しだす。
スタンフォード大学心理学部ではある実験をするため、被験者となってくれる男性を公募した。集まった20名ほどの被験者は無作為に「看守役」と「囚人役」に分けられ、学内に設けられた模擬刑務所に収容された。初めはそれぞれの役を演じるだけの簡単なアルバイトと誰もが考えていた。しかし、実験が進むうち、「看守役」の攻撃的な振る舞いはどんどんエスカレートしていく。それに対して、「囚人役」は卑屈に服従するのみで、まったく抗議できなくなっていく。いつしか、模擬刑務所内は単なる実験の枠組みを越えて、もはや誰にも制御不能の状態に陥っていく……。
1986年、フロリダ。ヒッチハイクをしながら売春する毎日に疲れ果てたアイリーンだが、ある少女と運命的に出会う。相手のセルビーは同性愛者で、家族や社会からつまはじきにされ、アイリーン同様、絶望と疎外感を募らせていた。2人は意気投合し、どこかで一緒に暮らそうと決心。やがてアイリーンは売春業を再開するようになるが、ある客に森の奥へ連れ込まれて暴力をふるわれた彼女は反撃した結果、相手を殺してしまう。
霧の都・ロンドン。テムズ河に女性の全裸死体が浮かんだ。今回も犯行手口は縞柄のネクタイによる絞殺。市民は姿なき殺人鬼の相次ぐ凶行に震え上がっていた。そんな折、元妻を殺され容疑者になってしまったリチャードは、友人のラスクに助けを求めるが…。
D.ホフマンとR.デニーロという2人の個性派俳優が挑んだ政治風刺喜劇。執務室で少女にイタズラをした過去が暴かれ次の選挙での再任が危うくなった大統領がとった手段とは……。
フロリダ。高校の人気教師サムが、教え子のケリーからレイプされたと訴えられ、裁判が開かれることに。だがケリーのクラスメイトのスージーの証言によって事件はケリーの狂言だと暴露され、サムが多額の慰謝料を手にして裁判は終結する。それに不審を抱いた刑事デュケは再捜査に乗り出すが、実はサムはケリーやスージーと裏で手を組んでいたのだった。しかも事態は、その後も意外な方向に突き進んでいく。
15歳の姉エレナと13歳の妹アナイスの姉妹。姉妹のルックスは、姉は華奢で美しく、妹はちょっと小太り。このルックスの全く違う姉妹には共通の目標があった。それは、いかにして処女から脱出するかということ。ある夏休み、家族でバカンスに出掛けていた二人はイタリア人の大学生フェルナンドに出会う。フェルナンドを自分の相手と決めたエレナは、彼に猛烈なアプローチを開始する。ある夜、姉妹の寝室に忍び込んできたフェルナンドを迎え入れるエレナ。しかし、エレナにはどうしても最後の一線を超える勇気が持てない。彼女は、「愛し合っていなければ、最後の一線は越えられない」という考えを持っていた。その最中、隣のベッドでじっと息を殺していたアナイスは、「はじめての相手は好きでない人でもいい」という考えを持っていた。果たして、2人の「はじめてのセックス」はどういう結果をもたらすのだろうか。<テーマはカトリーヌ・ブレイヤ監督が最も得意とする「少女たちの性」。少女たちや大人たちにとって「処女」や「はじめてのセックス」とはどういう意味を持つのか。15歳と13歳の容姿の違う姉妹の物語を通して、監督が投げかけてくる「処女」の概念をあなたはどう捉えるのだろうか。>