あなたは自分が誰なのか知っていますか?誰なのかと問われると、一瞬、答えに詰まってしまう。なぜなら人はみな、自分の意思でこの世に産まれ落ちたわけではないから。だから、自分が誰なのかを語るには“誰々の子供です”、“どこそこに勤めている何々です”など、自分以外の何かが必要になる。すなわち、自分が創られたのは親の意思であり、さらに遡れば、その親にも意思がない事になる。本作では、そのような親から受け継いだ遺伝子により、自分が知らない自分、自分では制御出来ない自分に苦しめられる人間を描く。主人公A子とその内面から派生した異なる人格。A子を中心に複雑でトリッキーなドラマが展開する中から見えてくる人間模様。そしてその先にある性と生、あるいは死とは…。
女流陶芸家・乾登紀子とその住み込みの弟子となった結城はるか。はるかは登紀子を一途に慕い、師匠と弟子という関係を超えて、特別な愛情を抱いていた。ところが登紀子は男遊びが激しく、毎日のように男をアトリエ兼自宅に連れ込んでいた。しかし男では満足できず、男が帰った後、必ずはるかの体を求めてくるのだった。そんな登紀子のワガママにも、彼女と体を重ねることに悦びを感じてしまうはるか。そんなある日、登紀子が有名な陶芸家の息子・悟を新たな弟子として迎え入れたことで、はるかと登紀子の関係は大きく狂い始めるのだったが…