ナチス占領下のフランスを舞台に、女優、その夫である演出家、女優の相手役の男優という3人がおりなす愛をめぐる葛藤を、現実と舞台という二重構造の中で描いたトリュフォーの渾身作。セザール賞で作品賞、監督賞、主演男女優賞など主要10部門を独占し、トリュフォーを名実共にフランス映画界のトップの座に押し上げた長編第19作。ヒロインには、トリュフォー作品「暗くなるまでこの恋を」のドヌーヴが久しぶりに起用され、美しさをたっぷりと披露。共演はトリュフォーの次作「隣の女」にも続けて出演したG・ドパルデュー。 1942年、パリ。ユダヤ人の劇場支配人兼舞台演出家のルカは南米に逃亡したと偽装しつつ、劇場の地下でひそかに潜伏し、劇場の看板女優である妻マリオンを主演女優にし、何とか芝居の上演を続ける。そんな事情も知らず、新たに芝居に加わった男優ベルナールは美しいマリオンに夢中になるが、マリオンはそんなベルナールに冷たい素振り。だが通風管から聞こえる2人の芝居から、ルカはマリオンがベルナールを愛していると気づく。

16世紀末のロンドン。スランプに陥っていた劇作家シェイクスピアはオーディションにやって来た一人の若者トマス・ケントを追ってとある屋敷へたどり着く。そこには以前、芝居の最中に目を留めた美しい女性ヴァイオラの姿があった。シェイクスピアと彼を信奉するヴァイオラはたちまち恋におちてしまう。燃え上がる恋心が創作意欲をかき立てたのか、シェイクスピアの台本は急ピッチで仕上がって行き、トマス・ケントを主役とした芝居の稽古も順調に進んでいた。ヴォイオラの別れの手紙をトマスから受け取ったシェイクスピアは納得できず再びトマスの後を追うのだが、そこで彼はトマスこそヴァイオラの男装した姿だった事を知るのだった。