ある私立の名門女子学院の放課後、甘川歌江と殿宮アイ子の仲が、同級生の間で噂になっていた。歌江は並はずれた体格から、“火星さん”という仇名を付けられ、みんなから疎外されていた。そんな歌江をアイ子は優しく労り、いつしか二人は誰も入り込むことのできない深い関係になっていた。二人の通学する学院の校長森栖礼造は、書記の川村や英語教師のトラ子と共謀して不正行為をおこない、歌江の弱みにつけ込んで処女をむさぼろうとする偽善者だった。あるとき歌江は森栖に犯され妊娠してしまう。それを知ったアイ子は血相を変え、歌江に詰寄るのだった。二人は傷つき、醜い大人の世界を知った。やがて二人は森栖ばかりでなく川村、トラ子、そして病身の妻を虐待し、芸者遊びに興じるアイ子の父・愛四郎らへの復讐心をかりたてていった。歌江ら卒業生の主催する謝恩パーティの行なわれたその夜、学院で火災がおこり、焼け跡から黒焦げの死体が発見される。そして森栖を呪った遺書が見つかったことなどから、その遺体は歌江と断定される。森栖は責任を追求されるのを恐れ、逃げまわる。歌江の死後、川村とトラ子が奇怪な死を遂げた。一方アイ子は、泥酔しきった愛四郎の前に現われ、そんな姿を罵り、貪欲な欲望をあざ笑うのだった。赤く染まる荒涼とした埋め立て地を、夢遊病者のように歩く森栖。突然二つの影が現われた。歌江とアイ子だった。火災現場から発見された遺体は歌江ではなかった。ただ茫然とする森栖の前で、二人は一体となり見る見る内に炎に包まれていった。炎と煙りに包まれた歌江とアイ子の前で、獣のように叫び狂乱する森栖の無惨な姿があった。地獄絵さながらのその光景の中で、黒い煙が大空に充満し二つの花芯は燃えつき、ひたむきな少女の心を犠牲にしたすべての復讐が終わった。

入鹿夕子は長い海外生活から数年ぶりに日本に帰って来た。郊外にあるオーロラ・コーポには入鹿一族が住んでおり、その夜から彼女はそこで暮すことになる。入鹿一族はかつて、ある村に住んでいたが、そこがダムになり湖底に沈むことになったのだ。夕子が邸に入っていくと、パーティの最中で、晶子という18歳の娘が男たちに輪姦されていた。中心になっているのは夕子の兄で画家の卓也だ。翌朝、卓也と妻の貴子は息のない晶子を車で運び、山奥に捨てると、二人は激しく貪り合うのだった。夕子が鉄格子の部屋を見つけると、そこに高級ブティック、アリスの服があった。夕子はアリスを訪ねると、オーナーの三田は、ある画家が若い娘に服を着せてパーティをやるのが好きだとの話を聞く。三田は夕子にもその画家を紹介するといい、ホテルのバーで待ち合わせた。飲み物に薬が入っていたのか、夕子の意識が薄らいでいく。卓也は夕子を認めると、三田に好みではないと去っていく。夕子が意識を戻すと、かつて恋人でルポライターの伊吹がいた。彼は、アリスで服を買ってもらって失踪する若い女の事件を追っていた。数日後、賞を受けた卓也のパーティが行なわれ、峰子という娘が消えた。夕子は何とか兄を説得しようと決意する。兄の部屋に入っていくと、そこは夕子の絵ばかりがあった。貴子によると、卓也はどんなモデルを使っても夕子になってしまうという。夕子は兄に自分を描いてもらうと、激しく体を重ねた。貴子は卓也と自分に注射を打つと、やがて二人は息を引き取った。遠くからオーロラ・コーポに向かうパトカーのサイレンが聞こえてきた……

都心から離れた住宅地、希望ヶ丘で暮らす猫田夫妻。妻・弘子は夫・千吉のEDを治し、満ち足りた夫婦生活を送ろうと奮闘していた。そんな妻の姿に辟易した千吉は、同僚女性への妄想を膨らましていく。